ピアノのピッチについて~440~444?432?~

こんにちは!としさん@津久井俊彦です!
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ピアノの調律師さんに「ピッチのご希望はありますか?」って聞かれたことありますか?

調律をする時に1番最初に調律するラの音の振動数(高さ)のことです。

この”ラ”はA4、49Aって呼ばれる時もあります。単位はHz(ヘルツ)で基準の音が高ければピアノ全体の音が高くなりますし、その逆もしかりです。
このピッチの指定は日本とオーストリアでも少し異なります。

本記事では、そんなピアノの「ピッチ」についてまとめました。
ここに書いてある内容は全て現代ピアノに限ります。作曲家が生きていた時代のピアノになると数字が全く別のものになります。オーストリアにはこういったピアノもゴロゴロあるので機会があれば別の記事にまとめようと思います。

ピッチのご希望はありますか?と聞かれたら・・・

よくわからない場合には、「普通でお願いします」でOKです。良いように調律してくれるはずです。
ピアノの先生や音大生でよくわからないという方は、「ピッチ」について少しでも知っておいて損はありません。どんな時にピッチを指定するのか、各ピッチの傾向とどんなシチュエーションで指定されるのかについてこれから書いていきます。

ウィットナー 音叉セット 440Hz & 442Hz

どんな時にピッチが指定されるのか

特定のピッチが指定される最も多いパターン、それは他の楽器と合わせる時です。

ピアノのソロの時には極端な話、ピッチはどの数値でも成立します。他の楽器の伴奏やピアノコンチェルトの場合にはそれぞれの楽器、あるいはオーケストラの適正のピッチで調律をします。歌の伴奏も必ず指定が入ります。

音の傾向

ピッチが高い=弦の張力が高くなります。そうすると音色に張りがでて華やかに聴こえたり、倍音が減るのでピュアな響きと和音になったりもします。

ピッチが低い方が張りのある華やかさは少なくなりますが、高いピッチのピアノと比べると暖かい雰囲気で和音のハーモニーも広がりのあるものになるような気がします。

それでは各ピッチについて具体的に書いていきます。

440Hz

ユニバーサルピッチと呼ばれています。1939年にロンドンで開催された国際会議で決定されたため、こう呼ばれています。1900前後から戦前くらいまでのピアノはこのピッチが合っているように個人的には思います。

メーカーの基本設計が440と言われているので、そのメーカーの個性が最も出るピッチかもしれません。としさんは440大好きです。

歌のコンサートの時にたまに指定されます。ソプラノやテノールなどの高い音が歌いやすくなります。逆に管楽器と合わせる時は440だと成立しないとよく言われます。ですがアメリカのオーケストラは確か440と聞いたことがあります。

441Hz

日本のジャズバーやレコーディングスタジオのピアノが441指定になっていることが多いです。理由はわかりませんが、ジャズのコンサートの時も大体441指定です。

一般家庭でこのピッチで調律するメリットは、季節の変化によってピッチが変わっても極端に低くなったり高くなったりしないという点です。

442Hz

日本のコンサートホールのピアノは大体442指定です。コンサートピッチって呼ばれたりするのもそのせいでしょうか。他の楽器と合わせる時もほぼ442でいけます。

日本で働いていた時は一般家庭のピアノは基本的に442で調律していました。

443Hz

オーストリアではどのピアノもほぼ443で調律します。専門でピアノを弾く人からの指定も同じです。音楽学校のレッスン室やコンサートホール、他の楽器と合わせる時もオーストリアではほぼ443。
特に有名オケメンバーの自宅のピアノは「絶対に443!」と指定が入ります。

444Hz

日本にいた時はありえないピッチだと思っていましたが、オーストリアでは稀に指定を受けます。特にソロで舞台で弾くことが多い方からです。ただ先日行った時にはオーケストラの後ろにいるピアノ用で444の指定の仕事がありました。

ロンドンはほぼ444って噂を聞いたことがあります。これ本当なのかなと思うのですが内田光子さんが444で弾くようになったのがきっかけとか。
(Twitterでイギリス在住の日本人の方からの情報によると、家庭用のピアノの調律を頼むと440が普通らしいです)

この444は弦がかなり強く張られるので、古いピアノや張力が元々高いピアノでは正直やりたくないです。弦が切れるリスクがあり、余計なお金がかかってしまいます。

【重要】ピッチを指定する時の注意点

コンサートの場合にはそのホールの指定ピッチがあります。そのピッチ以外で調律する場合、元のピッチに戻すための調律料金が余計にかかるので必ずホールに問い合わせるようにしてください。

一般家庭のピアノは基本的に自由ですが知っておくべき事があります。

それはピッチの変更は簡単ではないという事です。

調律を何周かしないといけない時もありその場合には別途費用がかかることもあります。
またピッチを変えない時と比べると調律は安定しない(狂いやすい)です。そして気に入らないからといって戻すためには、やはり調律が必要になるのでこのためにもまたお金が掛かります。

以上が主な注意点です。

ご自宅のピアノのピッチを指定される時には、まず調律師さんと相談されるのをオススメします。現状が何Hzなのかを聞いてみるのもありです。

432Hz~癒しの周波数?~

以前から注目されている”宇宙の自然な主音”とも呼ばれているピッチです。確かにこの周波数の音楽を聴くとなんとなくリラックス出来るような気がするので僕も結構好きです。

これについては調べるといくらでも出てくるので、ここでは調律師視点から見たピアノを432Hzに指定する際の落とし穴について書いていきます。

【落とし穴】現代ピアノを432Hzで調律した時にピアノに起こる問題

ショパンが生きていた時代のピッチは約430Hzと言われています。この時代のピアノはこのピッチを想定して作られているので、442Hzに調律したらおそらくダメになってしまうと思います。

これと同様に現代のピアノは440Hzで良い音が鳴るように設計されています。この設計とは弦の長さと太さの事です。

440Hz以上で普段調律されているピアノを432Hzにすると弦はかなり痛んでピッチを戻した時に切れやすくなります。

また1番大きな問題は低音弦です。特にフルコンサートグランドのような大きなピアノの場合、巻かれている銅線が緩んでしまい再び普通のピッチに戻した時に雑音が混じった音になってしまいます。1回こうなってしまった弦は交換しない限り元には戻らないため、ホールなどの公共のピアノでは絶対にやってはいけません。

ご自宅のピアノのピッチはもちろん持ち主の自由です。
ただ432Hzに指定する時には、元のピッチに戻した時に弊害があるという事を知っておく必要があります。

さいごに

ピアノの調律のピッチについてここまで書いてきました。
このピッチ、音叉や電子音で聴くと正直あんまり違って感じません。ですが、ピアノ1台となると音色や雰囲気はかなり変わります。ピアノは買い替えるものではないので、その中で少しでも違った雰囲気を楽しむためにたまにピッチを変更してみるのもありかもしれません。

以上になります。
最後まで読んで頂きましてありがとうございました。 としさん