梅雨と夏のピアノのための湿気対策

こんにちは!としさん@津久井俊彦です!
横浜を拠点にピアノ調律師やってます♪

湿気はピアノに良くない。
ピアノをお持ちの皆さま、誰もが一度は聞いた事があるのではないでしょうか。
この湿気がピアノにどう良くないのか。湿度が高いと実際に何が起こるのかについて調律師としての経験を元にまとめました。
オススメの除湿器や湿度計についても別の記事にまとめています。これからの湿度が高い季節、この記事が少しでも役に立てばと思います。

具体的な対策方法が気になる方は、目次からそのまま対策方法へどうぞ。

なぜ湿気に弱いのか

ピアノに使われている主な材料は主に4種類です。

響板や外装、鍵盤などの木材。
弦などの金属。
メカニック部分に使われているフェルト類。
同じくメカニックの重要な部分に使われている皮部品。

この4種類のうち、木材・フェルト類・皮は湿度によって膨らんだり縮んだりします。湿気が多いと、鍵盤の木材やフェルト、あるいはメカニック部分のフェルトや皮が膨らんで、鍵盤が戻ってこない・音が止まらないといった不具合が起こります。
また、金属類も湿気によって錆が発生します。
この湿気によって一度膨らんでしまうと、なかなか元には戻らずいつの日か部品交換が必要になったりします。
また、ピアノの中は風通しが良いとは言えないため、湿気によってピアノの中でカビが発生してしまう事もあります。
日本の夏は湿気が多く、逆に冬は過乾燥するためこの繰り返しによって場合によっては高額な修理が必要になってしまう事もあります。

少しでも湿度に気を使うことによって余計な出費を避けることが出来ますし、長く快適にピアノを楽しむことが出来ます。
ここからはピアノにとっての理想的な環境と、これに少しでも近付けるための具体的な対策方法について書いていきます。

理想の環境

理想は20℃ 50%です。

コンサートホールの楽器庫といって、普段ピアノや貴重な楽器たちが置かれている倉庫があるのですが、この中は20℃50%に常に保たれています。一般家庭でこの環境を保つことはほぼ不可能ですし、そもそも20℃って結構寒いですよね。
調律師としての経験から言うと、基本的には人間にとって快適な環境はピアノにとっても快適という事です。なんとなくジメジメするなぁ、なんか暑いなぁと感じる環境はピアノにも良くありません。
一般家庭では40~60%の間に入っていればOKです。
(相対湿度というものがあるのですが、ややこしいので上の数字でほぼ問題ありません)

具体的な対策方法

基本的なこと

湿気が多い季節と聞くと梅雨のイメージがありますが、実際に1日中夜も含めて湿度が高いのは残暑の9~10月です。湿気対策は6月の梅雨の始まり~10月までと実は長丁場だという事を知って頂ければと思います。それでは具体的な対策方法についてです。

ピアノ用乾燥剤

ピアノの中に入れるタイプのピアノ用乾燥剤というものがあります。これは効かないわけではありません。ですが、ピアノの湿気対策に大切なのはお部屋の環境です。この乾燥剤を入れているからといって大丈夫という事はありません。逆に言えば、乾燥剤を入れる必要がないお部屋の環境が理想です。

湿度計

まずお部屋の湿度がどれくらいあるのかわからないと対策出来ません。スーパーEXセンサーというものが入っているもの、あるいはタニタのものが割と正確な気がします。細かく見る必要性はありませんが、24時間の湿度の推移が表示されるものもあるようです。
置き場所はピアノの上または近くが理想です。

湿度計は注意する点が1つあります。それは信じすぎてはいけないという事です。中には正確ではないものもあります。明らかに湿気を感じるけども湿度計は50%になっているという場合にはご自身の感覚を信頼された方がいいです。その場合には別の湿度計を買った方がいいかもしれません。

除湿機

水がタンクにたまるタイプの除湿機です。ピアノのための湿気対策には最も有効です。

コンプレッサー式、ゼオライト式、ハイブリット式など色々タイプはあります。ゼオライト式は温度がかなり上がるので、個人的にはコンプレッサータイプがオススメです。

置き場所は同じ部屋のなるべくピアノから離れたところです。リビングの場合や広いお部屋の場合には、大体3メートルくらい離れたところに置いてください。

間違ってもピアノに直接風を当てることのないようご注意を。木が割れます。

天気が悪い時の洗濯物を乾かすのにも使えると好評です。

エアコンの除湿

これは調律師としての経験から言うと、あまり効いてないように思います。むしろ冷房の方が効いているような印象があります。

ダンプチェイサー

ピアノの内部に設置する湿度調整のための機械です。
これは主に雪国などの冬場の湿気に対して有効ですが、例えば関東地方の夏にはあまり活躍しません。

ピアノカバーは薄いものを

傷防止には厚手のピアノカバーが有効なのですが、実はピアノの中が更に密閉空間になってしまうため、意外とカビの原因になったりもします。これからピアノカバーの購入を検討されている方は薄手のもの、例えばレース素材のようなものをオススメします。

ピアノの中がカビていたりした場合には調律師さんは必ず言うので、特に何も言われていないという方は、今から薄手のカバーに買い替える必要はありません。

最も大切なこと

最後に湿気対策の最も大切なことをお伝えします。

それは、そこまで神経質になる必要はないという事です。
ここまで書いてきた内容と矛盾しますが、最もお伝えしたいことはズバリこの事です。

ピアノを大切に思ってくださる事は調律師としてとても嬉しいことです。ですが、窓を開けたまま外出して雨が降ってきたからといって急いで帰る必要はないですし、除湿機の水を捨て忘れてしまったからといって焦る必要はありません。

1番大切なのはそのピアノがあることで楽しい生活が送れることです。ストレスを抱える必要は全くありません。

少しでも気にかけて頂くだけで良い状態は保たれます。

終わりに

ここまで基本的な梅雨・夏の湿気対策について書いてきました。

去年からオーストリアで調律師として働いているわけですが、ピアノの状態がどの家庭に伺ってもとても快調なんです。この大きな理由の1つは夏の湿気が少ない事だと思います。そのためオーストリアでは除湿器というものは全く売れないそうです。
本記事が快適なピアノライフのために少しでも役に立てばとても嬉しいです。

以上になります。
最後まで読んで頂きましてありがとうございました。 としさん