今年のハイライトとほんの少しだけ裏話とさらにその裏話

  • 2021年12月30日
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激動の2021年

こんにちは!としさん@津久井俊彦です!
日本では横浜を拠点にピアノ調律師やってます。

2021年は個人的に本当に色々なことがありました。

去年の今頃はYouTubeの1本目を撮影したりしていて、その時はコロナも春には収まって遅くとも夏には家族もオーストリアに来てなんて考えていたのを懐かしく思います。

プライベートの事はさておき、調律師としても数多くの修羅場がありました。

というのも2020年の冬にコロナで延期になったコンサートが今年の春以降に回ってきたことによって、オーストリア全体で調律師不足という現象が起きました。

そのため本来僕が招集されるはずがないようなレーベル、またピアニストさんのコンサートや録音を担当することになったり、あるいは音楽祭などのサポートとして深夜作業が続き、その中で常に自分の力の足りなさを痛感し続ける、そんな毎日でした。

そんな2021年だったわけですが、個人的に印象に残っているのはあの4台ピアノ企画です。

4台ピアノと少し裏話

たくおんでお馴染みのウィーン在住ピアニスト、石井琢磨さんのYouTubeチャンネル「TAKU音-TV」の企画で4台のフルコンサートグランドを使ってのベートーベン第7番。

ピアニストはウィーン在住の4人、石井琢磨さん、宮田森さん、藤川有樹:さん、髙木竜馬さんの4人。

これが個人的には今年のハイライトかなと思っています。

この企画が決まった時から、4台のピアノをどうやって仕上げていくべきかを考える毎日。正直2台ピアノの経験すらほとんどない自分にとって4台は未知の世界でした。

使うピアノはファツィオリ、スタインウェイ2台、そしてシゲルカワイの4台。会社にあるスタインウェイ2台でも全く異なる個性を持っていて、この4台をどう調和させたらいいのだろうと悩みながら、ベト7の音源をたくさん聴いたり、ピアニスト4人の演奏動画を見てはああでもないこうでもないと色々実験的に調整を繰り返す日々を過ごしていました。

そして今だから話せることがありまして、それは実はこの時点で大きな間違いをしていました。

それは4台を調和させようと考えていたことです。

調和→個性

撮影の日が近付いてくる中で、なんとなく調和するポイントがわかってきたような手応えを感じていたのですが、ある仕事から戻ってきたタイミングでそれをやってみたところ、どのピアノもまとまりはあるものの各楽器の魅力が無くなったような感覚がありました。良くも悪くも優等生といったところでしょうか。

ここでハッと思ったことがありまして、そもそも4人とも全く個性が違うピアニスト、だったらピアノもそれぞれの個性がより出ていた方がもっと面白いことが起こるんじゃないか。

そして、ピアノの良さを消して調和させることは、見方によってはこの4人を信頼していないという事にもなってしまうのではないか。

この瞬間から調和させるなんて事は一切考えず、この4人ならうまく弾いてくれるはずという信頼のもとに(丸投げにも聞こえますが)、4台のピアノがそれぞれ1番個性が出るポイントに持っていくことに集中しました。

幸運だったのは、仕事が終わった後の時間に試行錯誤しながらピアノを調整していた僕を見て、上司のミヒャエル(スーパー調律師)がこの4台ピアノの企画に大きな興味を持ってくれて「自分も手伝いたい」と言ってくれたこと。

これによってああだこうだ言いながらより良い仕上がりになったのではないかと思います。

演奏については僕が何かを言うまでもありません。ぜひ動画をご覧になってください。
(最初に貼ってある動画です)

誰にも話していない裏話の裏話

この日個人的に失敗したなとずっと思っていることがあって、それは撮影終了!と同時に暖かいコーヒーを4人に出してしまったこと。ビールとまではいかずとも冷えたコーラを出せば良かったなと今でも後悔しています。

次回。夢のような話ですが”次回”がもしあれば、その時は冷えたコーラを出そう!(コーラリベンジ!)と思いながら年末を過ごしているとしさんでした。

読んで頂きましてありがとうございました。
としさん@津久井俊彦